バングラデシュに学校設立

若い世代が夢を持てる社会に 刈谷市の清水玲さん

 「若者が、将来の自分に夢をはせて生きていけるように」。
小垣江町の清水玲さんは2019年、バングラデシュ北部コチュカタ郡の貧困農村に土木工学とコンピューター工学を学ぶ4年制の科学技術専門学校を設立。授業開始から2年目を迎え、16歳以上の学生92人が勉学に励んでいます。

―設立のきっかけ
 02年、コチュカタ郡から来日したNGO職員ムニールハックさんとの出会いが縁。「村は首都ダッカから300㌔離れた、義務教育も満足に受けられない貧しい地域」と教えてくれました。村に戻り生活改善を目的に草の根活動を続けた彼との交流は続きましたが、私は何もできなかった。
 同国の政府が教育に力を入れ始め、インターネットの普及で若者たちが「学ぶ環境」を求め出した。「学校建設の時を待っていた。今だ!」と動いたムニールさんに賛同し、16年に2人で学校設立プロジェクトを発足。「この時を逃してはいけない」と感じました。
 

 ―どんな支援を?
 卒業後、国内のインフラの整備をはじめ、国外でも活躍できるようにと、2学科を選び、設立資金には、貯金を充てました。「この学校は私の子ども。愛情深く、わが子を育てる」と思えたら不安は消えました。
 村の人は今を生きることに精いっぱいで、将来を見据えた子どもの教育に投資するといった発想を受け入れ難い。何度も現地に足を運び、高校や個人宅を訪ねて私たちの思いを伝え、生徒を集めました。質素な生活を送りながらも、ボロボロになるまで教科書を使う生徒を見ると「この子たちに学ぶ環境とチャンスを作ってあげたい」という気持ちが強くなります。
 

 ―現状と展望
 学校は一日5時限で週5日。ムニールさん
を校長に指導者は5人。校長室の前には毎日、悩みを相談に来る村人の列ができ、日本とは違う学校の存在意義を感じます。今後は、村が必要とする医療や女性の社会進出を促す学科の増設、経済的な理由で退学せざるを得ない学生の支援体制も充実させていきたい。私の″子育て”はこれからです。

【校舎前に立つ清水さん(右から5番目)、
ムニールさん(同4番目)とスタッフ】

清水玲(しみずれい)
1972年生まれ。作業療法士。

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