悲しい事故が起きない社会願う

坂田さん夫妻 亡き娘思い交通安全啓発

「交通事故が起きない社会へ さえりんからのお願いです」―。2年前の交通事故で長女坂田紗愛理さん=当時(20)=を亡くした母栄子さんが、安城署や知立市役所、知立や安城の自動車学校などに手作りのストラップを置いています。紗愛理さんが趣味の籠作りに使っていた手芸用紙バンドで制作。「ストラップを見て、運転に気を付けようと思ってもらえれば」と願いを込め、夫和彦さんと共に安全運転を呼び掛けています。 

【腹着姿にはにかむ当時20歳の紗愛理さん】

 事故が起きたのは、2019(令和元)年6月4日、国道155号上重原交差点。市内の衣料品店に勤めていた紗愛理さんが青信号の横断歩道を自転車で渡っていた際に、左折してきた大型トラックにはねられました。
 「優しくて、人を大切にする娘。家族思いで、イベントごとにケーキを焼いてくれたんですよ」と夫妻は紗愛理さんの思い出が詰まった部屋で語ります。

【願いを込めて作るストラップ】

思いつづるブログと手作りストラップ

 警察から受けた突然の悲報。「命より大切な娘を失ってどう生きていけば」と泣いて暮らす日々の栄子さんがたどり着いたのは、同じように子どもを亡くした遺族のブログ。
 ブログの発信者に連絡を取り、教わりながら栄子さんも開設。「加害者に対する感情、裁判など、遺族がどんな思いで過ごしているのかを知ってほしい」とありのままをつづっています。
 「励ましや応援、他の遺族との情報交換などで、気持ちが落ち着いてきました。このブログでずいぶん救われているんです」。悲しみをこらえながら、部屋にたくさん残されていた紙バンドで、紗愛理さんが作っていたような籠を編み始めました。
 昨年7月に刑事裁判で禁錮3年、執行猶予5年の判決が下された加害者の誠意が感じられない態度などから、控訴のための署名を集め、協力のお礼にとストラップを作りました。
 さらに、多くの人の手元に届くようにと作り続けている栄子さん。「ついうっかりでしたことが、本人や家族の人生を変えてしまうことを知ってほしい」

【設置がかなった看板を見上げる坂田さん夫妻】

立て看板に続く望み 歩車分離式信号設置

 和彦さんは、事故現場に注意喚起の立て看板の設置を市や国土交通省などに要望し続け、今年2月末、2カ所に高さ250センチ・幅90センチの看板がようやく設置されました。「遺族が声を上げなければ何一つ変わらない」。自身もブログを開設し、紗愛理さんの写真や交通事故に関する記事などを掲載しています。
 夫婦のもう一つの願いは交差点の「歩車分離式信号機」の設置。事故現場は高校生らの自転車通学路にもなっている交差点。「交通量が多いのは分かっています。押しボタン式でいいんです。紗愛理のような悲しい事故が起きてからでは遅い。ドライバーには横断歩道は横断者優先のルールを必ず守ってほしい」と、メッセージを添たストラップに望みを託します。
 ブログは「さえりんの部屋」(栄子さん)、「さえりんの部屋別館」(和彦さん)で読むことができます。

知立くらしのニュース2021.03.26掲載

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