町ぶら刈谷百景(1)

 ■往時の面影や歴史、今に伝える記念鉄塔

 刈谷市高須町にある「フローラルガーデンよさみ」には、赤白模様の鉄塔が建っています。旧依佐美送信所の記念鉄塔です。

 同送信所は、1929年に造られた世界最大級の長波無線通信所。太平洋戦争時には日本海軍潜水艦との交信に重用され、真珠湾攻撃時の「ニイタカヤマノボレ」の暗号文がここから潜水艦へ発信されたともいわれています。

 当時、周辺には高さ250メートルのアンテナ鉄塔が2列に4基ずつ並んでいました。広大な田園地帯に8基の鉄塔がそびえる様子は、刈谷の特異な風景として市民らに長く親しまれました。鉄塔は97年、送信所は2006年に解体。「電車からあの鉄塔を見ると、刈谷に帰ってきたという思いがした」と、懐かしそうに話す高齢者も少なくありません。

 記念鉄塔は、解体された鉄塔の一部を利用して設置されました。高さ25メートル(当時の鉄塔の10分の1)。横には依佐美送信所記念館があり、静態保存されている貴重な通信設備を見学することもできます。

 親子連れでにぎわうフローラルガーデンよさみに、静かにたたずむ記念鉄塔。往時の面影や歴史を今に伝えています。

関連記事一覧